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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(ネ)6号 判決

控訴代理人は主文同旨の判決を被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

控訴代理人は被控訴人は昭和十二年一月現役兵として入営後間もなく下士官志願を爲し昭和二十年十二月一日復員により予備役に編入せらるるまで職業軍人として現役に服していたもので所謂召集せられたものでないから買收除外の特別取扱を受けるものに当らないと主張し被控訴代理人において被控訴人が昭和十二年一月現役兵として入営後日華事変中に下士官志願を爲したことは認めるが召集とは軍人が軍人の資格で当時の日本軍の命令により軍務に服していたものをいい志願によると否とを問わないと述べた外当事者双方の事実上の陳述は原判決事実摘示と同一であるからここに引用すると述べた。(立証省略)

三、理  由

河内村農地委員会が被控訴人所有の別紙目録記載の農地を昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基き自創法第三條第一項の不在地主所有の小作地であるとして買收計画を立てたこと、被控訴人はこれに対し異議の申立をしたが却下せられ更に控訴人に対し訴願を爲したが昭和二十三年十二月二日訴願棄却の裁決がありその裁決書は同月十五日被控訴人に送付せられたことは当事者間に爭のないところである。

被控訴人は本件農地の買收基準日当時河内村に住所を有しなかつたのは昭和十二年一月十日現役で應召した爲であつて昭和二十年八月十五日以前の召集であるから自創法施行令第一條第三号の特別事由に該当し自創法第四條第二項により河内村に住所を有するものとみなされるにも拘らず不在地主の農地として買收したのは違法であると主張するから案ずるに被控訴人が昭和十二年一月十日現役として入営し其の後志願して下士官になつたことは当事者間に爭なく、成立に爭のない甲第九号証乙第八号証によると被控訴人は昭和二十年十二月一日予備役に編入されるまで現役軍人として勤務していたことが明かである。前記施行令第一條第三号に於て昭和二十年八月十五日以前の召集を特別事由としたわけは過ぐる日華事変又は太平洋戰爭に際し召集により其の意によらずして軍務の爲住所を離れた者までも一般の不在地主と同様に取扱うことは酷に失するとしてこれ等の者を除外する爲に定められたものと解するを相当とすべく被控訴人が現役として入営したのは兎も角其の後志願して下士官となつた時からは自ら進んで軍務に從事したものと認むるの外なくその時以來被控訴人は自らの意思によつて不在を続けたものといわなければならない。

從つて被控訴人の場合は昭和二十年八月十五日以前の召集に当らないから被控訴人の本主張は理由がない。

次に被控訴人は本件農地は自創法第五條に定める特別事由である召集によつて一時賃貸したものであるからこれを買收するのは違法であると主張するが被控訴人の場合は右の特別事由に当らないことは前段認定の通りであるから本主張も亦これを排斥する。

更に被控訴人は昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基いて買收されるときは自創法第六條ノ二第二項第四号に定める遡及買收をした者に比しその生活状態が著しくわるくなる結果を招くから本件農地の買收は違法であると主張するが本件土地について被控訴人が昭和二十年十一月二十三日以後耕作の業務を営んでいないことは成立に爭のない乙第一号証並びに原審証人山田フデの証言により明かであるから本條項を適用するの余地なく本主張は失当である。

なお被控訴人は本件農地買收には石川縣農地部長等の使嗾により河内村農地委員会が自己の意思をまげて事実を無視しこれを強行したものであると抗爭するけれどもこれを認むるに足る証拠なく却つて成立に爭のない乙第一、第五号証によればこのような事実のなかつたことが推認できるから本主張もこれを採用するわけにいかない。

右の次第であるから本件農地の買收については違法の点なく控訴人の裁決は結局相当であつてその取消を求める被控訴人の本件請求は理由がないのにこれを認容した原判決は不当であるからこれを取消し訴訟費用に付民事訴訟法第九十六條第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 斎藤省一郎 観田七郎 村上久治)

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